ちょいのすけ日記:ミニマルに生きる旅・生活・ガジェット記録

モノは少なく、体験は多く。ミニマリスト「ちょいのすけ」が、身軽な旅、快適な暮らし、選び抜いたガジェットについて試行錯誤した記録を綴ります。「なるほど」と思える発見を、あなたにも。

インデックス投資のすすめ:賢明な投資家が選ぶシンプルな道

目次

  1. はじめに:年収1,042万円の代償
  2. 私の投資実践記:シンプルへの回帰
  3. 本記事で紹介する必読書
  4. インデックス投資とは
  5. なぜ「オルカン一本」なのか
  6. 山崎元さんが教えてくれた投資の本質
    • シンプルであることの価値
    • コストの重要性を徹底的に理解する
    • 資産配分こそが投資の要
    • 投資に時間をかけないことの価値
    • 金融リテラシーの重要性
    • お金より大切なものへの気づき
  7. マルキール『ランダムウォーカー』が教える市場の真実
  8. エリス『敗者のゲーム』が示す投資の本質
  9. インデックス投資の実践:具体的なステップ
  10. よくある誤解
  11. よくある質問:Q&A
  12. 投資の心理的罠:私が陥った3つのバイアス
  13. インデックス投資への批判と私の答え
  14. 山崎元さんの最後の教え:お金より大切なもの
  15. お金と人生:三人の巨人からの教え
  16. おわりに:投資は手段、人生が目的
  17. 参考文献・読書ガイド
  18. おすすめ書籍セット
  19. 執筆後記
  20. 付録:私の投資の変遷

はじめに:年収1,042万円の代償

2022年、年収1,042万円、月80〜100時間残業、複雑な投資管理。健康を犠牲にした1年でした。

2016年から山崎元さんの本を読み、インデックス投資を実践してきました。しかし、「もっと効率的に」と欲張り、複雑化させていました。

2023年、立ち止まって考えました。何が本当に大切なのか。

たどり着いた答え: - 投資商品:オルカン一本だけ - 投資時間:月1時間未満 - 年収:802万円(でも人生最高) - 家族:2025年結婚、2026年第一子誕生

これは、投資の技術論であると同時に、人生の物語です。

私の投資実践記:シンプルへの回帰

2016〜2021年:山崎さんの本を読み、インデックス投資メイン。順調な資産形成。

2022年:「もっと効率的に」と欲張り、個別株も追加。投資時間が週5〜10時間に膨張。年収1,042万円だが、過労で健康を損なう。

2023年:立ち止まって考える年。年収757万円に減少。山崎さんの教えを再確認:「お金より、時間・健康・人間関係」

2024年〜:原点回帰。オルカン一本に集約。年収802万円、人生最高の幸福度。

現在の投資戦略(2024年12月時点)

投資商品eMAXIS Slim 全世界株式(オルカン)一本 - 信託報酬:0.05775%(業界最安クラス) - 分散:全世界約3,000銘柄 - 投資時間:月1時間未満

投資資産内訳: - iDeCo:約200万円(月2万円積立) - つみたてNISA:月10万円積立(年120万円) - 特定口座:約500万円 - 合計投資資産:約700〜900万円

妻も同じ戦略: - iDeCo:月2万円 - つみたてNISA:月10万円 - 成長投資枠:年30万円 - 夫婦合計年間投資額:318万円(すべて非課税枠内)

年収は240万円下がったが、人生は比べ物にならないほど豊かに。


それでは、山崎元さん、マルキール博士、エリス氏という三人の巨人から学んだインデックス投資の本質を、私の実体験を交えながら、詳しく見ていきましょう。

本記事で紹介する必読書

山崎元さんの3冊

  1. 『がんになってわかったお金と人生の本質』(2024年)→Amazon
    遺作。投資より人生。私の人生を変えた一冊。

  2. 『難しいことはわかりませんが、お金の増やし方を教えてください!』→Amazon
    初心者向け。対談形式でわかりやすい。

  3. 『ほったらかし投資術』(水瀬ケンイチ共著)→Amazon
    オルカン一本戦略の実践書。

海外の2大名著

  1. マルキールウォール街のランダム・ウォーカー』→Amazon
    理論的支柱。「プロでも市場平均に勝てない」をデータで証明。

  2. エリス『敗者のゲーム』→Amazon
    投資哲学。「勝とうとせず、負けないこと」

インデックス投資とは

市場全体の動きを示す指数(インデックス)に連動する投資信託ETFを購入する手法。日経平均TOPIX、S&P500などに連動する商品で、市場全体に分散投資できます。

山崎さん:「インデックス・ファンドは、運用手数料が安く、市場平均のリターンを確実に得られる。これ以上の選択肢はない」

理由:プロでさえ市場平均を上回るのは極めて困難。

なぜ「オルカン一本」なのか

2016〜2021年:シンプルな時代

インデックスファンドメイン。順調な資産形成。投資時間も少なく、ストレスフリー。

2022年:複雑化の罠

「もっと効率的に」と欲張り、個別株も追加。結果: - 週5〜10時間の投資時間(時給数百円) - 毎日の株価チェックで精神的疲弊 - 過労で健康を損なう

2024年:原点回帰

山崎さんの教え「複雑さは敵」を再確認。オルカン一本に戻す。

現在の戦略 - 商品:オルカンのみ - コスト:0.05775% - 自分:月12万円積立(iDeCo 2万円 + NISA 10万円) - 妻:月12万円積立(iDeCo 2万円 + NISA 10万円)+ 成長投資枠年30万円 - 夫婦合計:年間318万円(すべて非課税枠内) - 投資時間:月1時間未満 - 2024年譲渡益:+2.1万円(楽天証券特定口座のみ、NISA分は非課税で含まず)

真の利益:年間250時間の獲得、心の平穏、家族との時間、2025年結婚・2026年第一子誕生

山崎さん:「運用する商品は全世界株インデックスファンドだけでいい」

山崎元さんが教えてくれた投資の本質

2016年から山崎さんの著作を読み続けてきました。その教えは、一貫してシンプルです。しかし、そのシンプルさの中に、投資の本質が凝縮されています。

シンプルであることの価値

山崎さんは常に「シンプルな投資が最良の投資」という立場を貫いていました。これは単なる好みの問題ではありません。

「投資において複雑さは敵である」と山崎さんは繰り返し述べています。複雑な金融商品は、売る側の利益のために設計されていることが多いのです。銀行や証券会社の窓口で勧められる商品には、高い手数料や複雑な仕組みによって、投資家の利益を目減りさせる構造が隠されています。

山崎さんは金融業界で働いた経験から、この内情を熟知していました。「金融機関の窓口で勧められる商品は、ほぼ例外なく買ってはいけない」という言葉は強烈ですが、業界を知る者だからこその警告なのです。

では、なぜシンプルな投資が良いのか。それは、シンプルであることが、投資の継続を可能にするからです。複雑な投資は、市場が荒れたときに判断を迷わせます。「この商品は今売るべきか?」「あの商品に乗り換えるべきか?」そうした迷いが、結果的に悪い判断を招きます。

一方、シンプルな投資戦略、たとえば「全世界株式インデックスファンド一本」という方針は、迷いを生みません。市場が暴落しても、やることは変わりません。淡々と積み立てを続けるだけです。

コストの重要性を徹底的に理解する

山崎さんが特に強調していたのが、運用コストの重要性です。「投資において確実にコントロールできるのは、リターンではなくコストである」という言葉は、投資の本質を突いています。

多くの投資家は、「どの商品が高いリターンを生むか」に注目します。しかし、将来のリターンは誰にも予測できません。一方、コストは確実にリターンから差し引かれる、確定したマイナスです。

山崎さんは具体的な数字で説明します。「年間1%のコストの差は、30年間で運用成果に約30%の差を生む」と。1000万円を投資した場合、この差は300万円にもなります。これは決して無視できる金額ではありません。

アクティブ運用の投資信託は、年間で1〜2%程度の信託報酬がかかることが一般的です。一方、インデックスファンドであれば、0.1%前後の商品も珍しくありません。eMAXIS Slim全世界株式(オルカン)は、信託報酬0.05775%という業界最安クラスです。

この差は、長期的には決定的な違いを生みます。しかも、コストは毎年確実に差し引かれます。高いリターンを狙って高コストの商品を選んでも、そのリターンが実現する保証はありません。しかし、コストは確実に発生します。

山崎さんは「コストを最小化することが、リターンを最大化する最も確実な方法だ」と断言します。この言葉を、私は2016年から何度も読み返してきました。

資産配分こそが投資の要

山崎さんは、個別銘柄の選択よりも、資産配分(アセットアロケーション)がはるかに重要であると説いています。

「投資のリターンの9割以上は、資産配分によって決まる。個別銘柄の選択が運用成果に与える影響は限定的だ」という主張は、多くの学術研究によっても裏付けられています。

これは何を意味するのか。多くの投資家が「どの株を買うか」に悩む時間は、実はほとんど無駄だということです。それよりも、「株式と債券をどの比率で持つか」「国内資産と海外資産をどう配分するか」といった大きな方針こそが、投資の成否を決めるのです。

山崎さんの提案はシンプルです。「金融資産は、大まかに言って、国内株式のインデックスファンド、先進国株式のインデックスファンド、そして無リスク資産(個人向け国債変動10年など)の三つに分散すればよい」。

この三つの資産をどのような比率で持つかは、個人のリスク許容度によって変わります。リスクを取れる人は株式の比率を高く、リスクを避けたい人は無リスク資産の比率を高くすればよい。しかし、株式に投資する部分については、インデックスファンド一択である、と山崎さんは明確に述べています。

投資に時間をかけないことの価値

山崎さんのアドバイスで特に印象深いのは、「投資に時間をかけないこと」を推奨している点です。

「投資は、人生において重要だが、時間をかけるべき対象ではない。適切なポートフォリオを組んだら、基本的には放置すればよい」という考え方は、一見すると奇妙に聞こえるかもしれません。

しかし、これは深い洞察に基づいています。多くの個人投資家が失敗する理由は、頻繁に売買を繰り返すことです。市場の短期的な変動に反応して売買すると、手数料がかさむだけでなく、感情的な判断によって最悪のタイミングで売買してしまうことが多いのです。

「年に一度、資産配分を見直してリバランスする程度で十分。それ以外の時間は、自分の仕事や家族、趣味に使うべきだ」という山崎さんの言葉は、投資を人生の中に適切に位置づける智恵を示しています。

多くの人にとって、本当に大切なのは、家族との時間、仕事での成長、趣味や社会貢献など、投資以外の活動です。適切な投資方針を立て、それを自動化すれば、投資に時間を取られることなく、人生で本当に大切なことに集中できます。

インデックス投資のシンプルさは、まさにこの哲学を体現しています。複雑な投資戦略に頭を悩ませる代わりに、シンプルな方針を立てて実行する。それが、投資における真の成功だと山崎さんは言います。

2022年、私は週に5〜10時間を投資に費やしていました。個別株の分析、売買タイミングの検討、ポートフォリオの調整。しかし、オルカン一本にしてから、投資に使う時間は月に1時間未満になりました。

年間で約250時間を取り戻したのです。この時間を、家族や健康、自己投資に使えるようになりました。これこそが、山崎さんの説く「投資の真の成功」なのです。

金融リテラシーの重要性

山崎さんは単に投資手法を教えるだけでなく、「なぜそうなのか」という原理原則を丁寧に説明することを重視していました。

「金融機関に騙されないためには、基本的な金融リテラシーを身につける必要がある。それは決して難しいものではない」と述べています。

特に、リスクとリターンの関係、複利の力、期待リターンの考え方といった基本的な概念を理解することの重要性を強調していました。「これらの基本を理解すれば、怪しい投資話を見抜くことができるし、適切な投資判断ができるようになる」というのが山崎さんの信念でした。

お金より大切なものへの気づき

山崎さんの最後の著作『がんになってわかったお金と人生の本質』は、投資の技術論を超えた深い洞察に満ちています。

癌という限られた時間の中で、山崎さんが到達した結論は明確でした。「最も大切なのは、お金ではなく、時間であり、健康であり、人間関係だ」と。

山崎さんは、癌という病を得て、何が本当に大切なのかを見つめ直しました。物欲、仕事、人間関係。すべてを見直し、「実はどうでもいいこと」を捨てていきました。

そして、最後に残ったものは、時間、健康、人間関係でした。

「運用する商品は全世界株インデックスファンドだけでいい。値動きしても一喜一憂しない程度の金額をそこに投入したら、あとは自分がどう稼ぐのか、運用以外の部分を大事にしよう」

12回の転職、数々の著作、そして癌。人生の最終局面で到達した答えは、驚くほどシンプルでした。

「お金に感情を振り回されるな。将棋の棋士が駒を懐に大事にしまい込まないように、私も商売道具であるお金に特別な執着心を持っていない」

この言葉は、投資との適切な距離感を示しています。投資は大切ですが、それに執着しすぎてはいけない。シンプルに、淡々と、そして人生で本当に大切なことに時間を使う。それが山崎さんの最後のメッセージでした。

私が2016年から山崎さんの本を読んできて、最も心に残っているのは、この「お金より大切なもの」という視点です。2022年、私は年収1,042万円を稼ぐために健康を犠牲にしました。しかし、山崎さんの教えを思い出すことで、原点に戻ることができました。

マルキール『ランダムウォーカー』が教える市場の真実

バートン・マルキール博士の『ウォール街のランダム・ウォーカー』は、1973年の初版以来、半世紀にわたって読み継がれている投資の古典です。この本が提示する「ランダムウォーク理論」は、インデックス投資の理論的基盤となっています。

株価の動きは予測不可能である

マルキール博士は、「株価の動きはランダムウォークである」という主張を展開します。ランダムウォークとは、酔っぱらいが千鳥足で歩くように、次にどちらに動くか予測できない動きのことです。

「株価は、利用可能なすべての情報を既に織り込んでいる。したがって、将来の株価変動を予測することは不可能である」というのが、効率的市場仮説の核心です。

マルキール博士は、多くの実証研究を引用しながら、この理論を裏付けています。テクニカル分析(チャート分析)も、ファンダメンタル分析(企業の業績分析)も、長期的には市場平均を上回るリターンをもたらさないことが、データで示されています。

この主張の意味するところは重大です。もし株価の動きが予測不可能であるならば、銘柄選択や売買タイミングを図ることに時間を費やしても無駄だということになります。

マルキール博士の有名な比喩があります。「サルがダーツを投げて選んだ銘柄のポートフォリオも、専門家が選んだポートフォリオも、長期的なリターンに大差はない」。これは、銘柄選択の無意味さを象徴的に表現したものです。

プロのファンドマネージャーでさえ勝てない

『ランダムウォーカー』の中で繰り返し示されるのが、プロのファンドマネージャーの成績が市場平均を下回るという事実です。

マルキール博士は、数十年にわたるデータを分析し、「長期的に市場平均を上回るアクティブファンドは、全体のわずか数%に過ぎない」と報告しています。

しかも、ある期間に好成績を収めたファンドが、次の期間も好成績を収める保証はありません。「過去の成績は将来の成績を保証しない」という警告は、投資の世界では常識ですが、多くの投資家は過去の実績に基づいてファンドを選んでしまいます。

では、なぜプロでも市場平均に勝てないのか。それは、市場参加者の大半がプロになったからです。かつて、市場参加者の多くは素人で、プロは卓越した分析と判断で市場を打ち負かすことができました。しかし今日、市場参加者の大半がプロであり、誰かが市場を上回るためには、他の誰かが市場を下回らなければなりません。

そして、高い取引コストと運用コストを考えると、平均して市場を上回ることは不可能なのです。

コストが勝敗を分ける

マルキール博士も、山崎さんと同様に、コストの重要性を強調しています。

「アクティブファンドがインデックスファンドに勝てない最大の理由は、高いコストにある。市場平均並みのリターンを得られたとしても、高い手数料を差し引けば、インデックスファンドに劣る結果になる」と指摘しています。

具体的な数字を挙げて、「アクティブファンドの平均的な経費率は1.5%程度、一方インデックスファンドは0.1%程度。この1.4%の差は、複利で考えると30年間で約40%もの差を生む」と説明しています。

さらに、見えにくいコストの存在も指摘しています。頻繁な売買による取引コスト、税金の影響なども考慮すれば、アクティブファンドの実質的なコストはさらに高くなります。

時間分散の力:ドルコスト平均法

マルキール博士は、個人投資家にとって実践的なアドバイスとして、ドルコスト平均法を推奨しています。

「毎月一定額を積み立てることで、価格が高いときには少なく、価格が安いときには多く買うことになり、平均取得単価を下げる効果がある」と説明しています。

この手法の優れている点は、市場のタイミングを計る必要がないことです。「いつ買えばいいか」という悩みから解放され、機械的に積み立てを続けることができます。

「市場のタイミングを計ることは不可能だ。しかし、時間を味方につけることはできる」とマルキール博士は言います。

長期投資の重要性

『ランダムウォーカー』では、長期投資の重要性も繰り返し強調されています。

「短期的には株式市場は激しく変動するが、長期的には着実に上昇してきた。20年、30年という期間で見れば、株式は債券や現金よりも高いリターンをもたらす可能性が高い」というデータが示されています。

マルキール博士は、過去のデータを詳細に分析し、「どの20年間を切り取っても、株式投資は正のリターンをもたらしてきた」という事実を明らかにしています。

もちろん、過去のパフォーマンスが将来を保証するわけではありませんが、長期的な視点の重要性を示す説得力のあるデータです。

「短期的な市場の変動に動揺せず、長期的な視点を持ち続けることが成功の鍵である」とマルキール博士は助言しています。

エリス『敗者のゲーム』が示す投資の本質

チャールズ・エリスの『敗者のゲーム』は、投資をテニスの試合に例えた名著です。この比喩は、投資の本質を見事に言い当てています。

ウィナーズゲームとルーザーズゲーム

エリス氏は、プロのテニスと素人のテニスの違いに着目します。

「プロのテニスはウィナーズゲームだ。勝者は、華麗なショットを決めることで勝つ。しかし、素人のテニスはルーザーズゲームだ。勝者は、より少ないミスをした方が勝つ」という洞察です。

そして、投資の世界も同様だと言います。「かつて、投資はウィナーズゲームだった。市場参加者の多くが素人で、プロは卓越した分析と判断で市場を打ち負かすことができた。しかし今日、市場参加者の大半がプロであり、投資はルーザーズゲームになった」というのがエリス氏の主張です。

ルーザーズゲームでは、勝とうとして無理なショットを打つよりも、ミスをしないことに徹する方が賢明です。投資で言えば、「市場を打ち負かそうとして積極的に売買するよりも、市場に留まり続けることが重要だ」ということになります。

平均への回帰

エリス氏は、「平均への回帰」という統計学的な概念を投資に適用します。

「短期的に好成績を収めたファンドも、長期的には平均に近づいていく。逆に、短期的に不調だったファンドも、やがて平均に回帰する」という傾向があります。

この現象は、好成績のファンドを追いかけても無駄であることを示唆しています。「昨年のスターファンドを買っても、今年もスターである保証はない。むしろ、平均への回帰によって期待外れの結果になることが多い」とエリス氏は警告しています。

だとすれば、最初から「平均」そのものを買えばよいというのが、エリス氏の結論です。「インデックスファンドは、平均そのものを提供する。それは決してエキサイティングではないが、長期的には最も賢明な選択だ」という言葉は、多くの投資家にとって示唆に富んでいます。

機関投資家の限界

エリス氏自身、機関投資家向けのコンサルティング会社を経営してきた経験から、プロの運用者の限界を熟知しています。

機関投資家は、高度な分析ツール、優秀な人材、豊富な情報を持っている。しかし、それでも市場平均を上回ることは極めて難しい」と率直に認めています。

その理由は、構造的な問題にあります。「市場参加者の大半がプロになった今、誰かが市場を上回るためには、他の誰かが市場を下回らなければならない。そして、高い取引コストと運用コストを考えると、平均して市場を上回ることは不可能だ」。

エリス氏は、「これは個々の運用者の能力の問題ではない。市場の構造が変化したことによる必然的な結果だ」と説明しています。つまり、どんなに優秀な運用者でも、市場全体がプロ化した環境では、継続的に市場を上回ることはできないのです。

投資の基本方針

エリス氏は、個人投資家に向けて、明確な投資方針を提示しています。

第一に、「長期的な投資方針を立て、それを守ること」です。「市場の短期的な変動に反応して投資方針を変更することは、最も避けるべき行動だ。一度決めた方針は、長期的に維持すべきである」と強調しています。

第二に、「分散投資を徹底すること」です。「一つの銘柄、一つの業種、一つの国に集中投資することは、不必要なリスクを取ることだ。インデックスファンドを通じた幅広い分散が、リスクとリターンのバランスを最適化する」と述べています。

第三に、「コストを最小化すること」です。エリス氏もまた、コストが長期的なリターンに与える影響の大きさを強調しています。「高いコストは、確実にリターンを減少させる。コストを最小化することは、リターンを最大化する最も確実な方法だ」という主張は、山崎さんやマルキール博士と完全に一致しています。

感情のコントロール

エリス氏が特に強調するのが、感情のコントロールです。

「投資において最大の敵は、市場ではなく、自分自身である。恐怖と欲望という感情が、合理的な判断を妨げる」という指摘は、多くの投資家の経験と重なります。

市場が暴落したとき、恐怖から売却してしまう。市場が高騰したとき、欲望から無理な投資をしてしまう。このような感情的な行動が、投資の失敗を招きます。

エリス氏は、「事前に決めた投資方針を守ることが、感情のコントロールに役立つ。市場が荒れているときほど、自分の投資方針を見返し、それに従うべきだ」とアドバイスしています。

インデックス投資は、この感情のコントロールを助ける仕組みでもあります。「市場全体に投資しているという確信があれば、個別銘柄の暴落に動揺することもない。また、銘柄選択の誘惑からも解放される」というのです。

投資は手段であって目的ではない

エリス氏の『敗者のゲーム』で印象深いのは、投資を人生の中に適切に位置づけている点です。

「投資は、人生の目標を達成するための手段であって、それ自体が目的ではない。投資に必要以上の時間とエネルギーを費やすことは、本末転倒である」という主張です。

多くの人にとって、本当に大切なのは、家族との時間、仕事での成長、趣味や社会貢献など、投資以外の活動です。「適切な投資方針を立て、それを自動化すれば、投資に時間を取られることなく、人生で本当に大切なことに集中できる」とエリス氏は言います。

インデックス投資のシンプルさは、まさにこの哲学を体現しています。「複雑な投資戦略に頭を悩ませる代わりに、シンプルな方針を立てて実行する。それが、投資における真の成功だ」という言葉は、投資との向き合い方を示す羅針盤となります。

私が2022年に複雑化の罠に陥ったとき、エリス氏のこの言葉を思い出すべきでした。投資は手段であって目的ではない。この原則を忘れたとき、人は道を誤るのです。

インデックス投資の実践:具体的なステップ

ここまで、三人の巨人から学んだインデックス投資の理論と哲学を見てきました。ここからは、より実践的な内容に入っていきましょう。

6つのステップ(簡潔版)

  1. リスク許容度を知る:若いほど株式比率を高く
  2. 資産配分を決める:株式と現金の比率(私:株式100%)
  3. 商品を選ぶオルカン一本(信託報酬0.05775%、3,000銘柄)
  4. 自動積立:月12万円(夫婦で24万円)、考えない仕組み
  5. 放置する:年1回確認のみ
  6. 継続する:何もしないことが最も難しい

最大の学び:2020年コロナショックで個別株売却→大失敗。オルカンにしてから誘惑から解放。

山崎さん:「投資で成功する秘訣は、当たり前のことを続けることだ」

よくある誤解

インデックス投資は退屈では?」

山崎さん:「投資は退屈であるべきだ。投資をエンターテインメントとして楽しむことが、失敗の元」

エリス氏:「良い投資は退屈。エキサイティングな投資は、たいてい悪い投資だ」

私の経験:退屈な投資(オルカン)にして、人生がエキサイティングになりました。

「今は市場が高値だから、暴落を待った方がいいのでは?」

三人とも明確に否定。マーケットタイミングは不可能です。

マルキール博士:「今が高値かどうかは、後になってみなければわからない」
山崎さん:「いつが高値で、いつが安値かは、誰にもわからない」

私の痛恨の失敗:2020年3月

コロナショックでパニック。個別株を売却しました。

数ヶ月後、売却した銘柄は2倍に。マーケットタイミングを図ろうとして、大きな機会損失を被りました。

教訓:「売るな、買うな、何もするな」

2023年の英断:休職中も積立継続

収入減、将来不安。「積立を止めるべきか?」と悩みました。

しかし、山崎さんの言葉を信じて継続。2024年、市場は回復。継続していたことが報われました。

結論:市場のタイミングではなく、人生のタイミングで投資せよ。そして一度始めたら、淡々と続けよ。

ドルコスト平均法で積立を続ければ、高値も安値も長期的には平準化されます。「完璧なタイミングを求めるより、今すぐ始めることの方が重要」です。

よくある質問:Q&A

Q: アクティブファンドの方が良いのでは?

A: 短期的には優れた成績のファンドもあります。しかし将来も続く保証はゼロ。過去の好成績は将来を保証しません。高い手数料を考えれば、インデックスファンドに勝つのは極めて困難です。

Q: 日本株だけで十分では?

A: 給与も不動産も日本。投資まで日本に集中すると、日本経済の不調時に全滅します。国際分散は必須。オルカンなら全世界に分散されます。

Q: 新興国株式にも投資すべき?

A: オルカンには新興国も含まれています(約10%)。これで十分。個別に新興国ファンドを買う必要はありません。

Q: 100%株式でいい?債券は不要?

A: 理論的には100%株式が最適。しかし暴落時の精神的ストレスを考えると、債券や現金は「精神安定剤」。自分が安心できる範囲で株式比率を決めましょう。

私の選択:株式100%(オルカン)。理由は41歳で投資期間20年あり、生活防衛資金も確保済みだから。

世帯状況: - 夫(41歳):年収約820万円 - 妻(35歳):年収約850万円 - 世帯年収:約1,670万円 - 2026年6月:第一子誕生予定

証券会社SBI証券iDeCo・特定)、楽天証券(NISA)の2社でリスク分散。どちらもオルカン一本。

投資の心理的罠:私が陥った3つのバイアス

1. 過信のバイアス

「自分は平均より優れている」という思い込み。

マルキール博士:「ドライバーの90%が自分の運転は平均以上と考える。統計的にあり得ない。投資家も同じ」

インデックス投資は「自分は特別ではない」という謙虚さから始まります。

2. 損失回避のバイアス

私の失敗:2020年3月コロナショック

市場暴落→パニック売却→数ヶ月後、銘柄は2倍に。

損失回避バイアスの典型的な犠牲者でした。

オルカン一本の威力:市場が下落しても「売る」選択肢がない。淡々と積み立てるだけ。

3. 情報過多

山崎さん:「情報が多いことと、良い投資判断ができることは別。情報過多は判断を混乱させる」

インデックス投資は情報収集の負担から解放されます。個別企業の業績を追う必要なし。日々のニュースに振り回されない。

インデックス投資への批判と私の答え

批判もあります。公平に見てみましょう。

批判 反論
インデックスが主流になると市場の効率性が失われる 杞憂。アクティブ投資家は常に存在する
非効率な市場ではアクティブが有利 優れた運用者を見つけるのが困難
暴落時はアクティブが損失を抑えられる タイミングはプロでも極めて難しい
インデックスは割高な株も買ってしまう では誰が割高・割安を確実に判断できる?

結論(三人一致):「完璧な投資手法は存在しない。しかしインデックス投資は、ほとんどの人にとって最も現実的な選択肢だ」

私の答え:2022年、「もっと効率的に」と欲張り、複雑化させました。結果は、時間の浪費とストレス。オルカン一本に戻して、すべてが解決しました。

山崎元さんの最後の教え:お金より大切なもの

遺作『がんになってわかったお金と人生の本質』は、投資の本を超えた「人生の本」です。

食道癌ステージⅣ。余命宣告。その中で山崎さんが到達した結論:

「最も大切なのは、お金ではなく、時間であり、健康であり、人間関係だ」

投資の最終回答:全世界株インデックス一本

「運用する商品は全世界株インデックスファンドだけでいい。値動きしても一喜一憂しない程度の金額をそこに投入したら、あとは自分がどう稼ぐのか、運用以外の部分を大事にしよう」

12回の転職、数々の著作、そして癌。人生の最終局面で到達した答えは、驚くほどシンプルでした。

私の体験と重なる教え

山崎さん:

「お金を稼ぐには幸福の犠牲が伴う。『お金』と『自由』のトレードオフを理解せよ」
「人生の幸福を決めるたった一つの要素は『自由』だ」

私の2022年:年収1,042万円、健康喪失、幸福度ゼロ。
私の2024年:年収802万円、健康回復、人生最高。

年収240万円の差 < 健康と自由の価値

山崎さんの言葉と、私の体験が完全に一致しました。

最期の言葉

「上機嫌なら全て良し。最期の1秒まで、幸福は追求できる」

この本を読んで、改めて気づかされました。2016年から山崎さんの教えを読んできましたが、2022年に複雑化の罠に陥った自分を、この遺作が原点に戻してくれました。

山崎元さん、ありがとうございました。

お金と人生:三人の巨人からの教え

エリス「投資は手段、人生が目的」

マルキール「人的資本が最大の資産」

山崎さん:「100万円を運用して年5%得ても5万円。年収を100万円上げれば、効果はずっと大きい」

山崎さん「お金より大切なもの」

「自分の人的資本への投資になるような使途と、この時期にしかできない経験に対する支出は、NISAを解約してでも行う価値がある」

他人と比較しない

マルキール博士:「投資は競争ではない。自分の目標を達成することが重要」

SNSの誘惑

2020〜2021年「個別株で100万円が1,000万円に!」の成功談が溢れる。

山崎さん:「他人の成功談はN=1のデータ。統計的に意味なし」

私はSNSから距離を置き、オルカン継続。2024年、騒いでいた人々の多くは市場から退場。淡々と積み立てた私は着実に資産を増やす。

投資は競争ではない。淡々と続けることが成功の秘訣。

おわりに:投資は手段、人生が目的

私の投資の変遷

2016〜2021年:インデックス投資メイン、シンプル、順調
2022年:複雑化の罠、過労
2023年:立ち止まって考える年
2024年〜:原点回帰、オルカン一本、人生最高

教訓:シンプルこそ最強。健康と時間こそ真の資産。

あなたへ

投資に迷う人オルカン一本、自動積立、忘れる
仕事で無理する人→ 年収より健康
お金の不安に悩む人→ シンプルな投資が不安を和らげる

山崎元さんの言葉

「投資は、人生を豊かにするツール。しかし最も大切なのは、時間、健康、人間関係だ」
「最期の1秒まで、幸福は追求できる」

私の答え

2022年、複雑化の罠に陥り、健康を損ないました。しかしそれは原点回帰の転機でした。

投資:オルカン一本 / 投資時間:月1時間未満 / 年収:802万円 / 幸福度:人生最高


健康であること、時間があること、愛する人がいること。

これ以上の資産はありません。


2025年11月
41歳、妻と子供を愛する一人の投資家より


📚 参考文献・読書ガイド

おすすめ読書順序

  1. 山崎元がんになってわかったお金と人生の本質』→ 人生の本質
  2. 山崎元難しいことはわかりませんが、お金の増やし方を教えてください!』→ 投資の始め方
  3. 山崎元・水瀬ケンイチ『ほったらかし投資術』→ オルカン実践
  4. マルキールウォール街のランダム・ウォーカー』→ 理論
  5. エリス『敗者のゲーム』→ 哲学

私の実際の読書順:2→4→3→5→1(でも1が最重要でした)

※本記事は教育・啓発目的で執筆。投資は自己責任で。
Amazonアソシエイト・プログラム利用。


📚 おすすめ書籍セット

初心者セット(私の人生を変えた3冊)

  1. がんになってわかったお金と人生の本質』(山崎元)→ 人生の本質
  2. 難しいことはわかりませんが、お金の増やし方を教えてください!』(山崎元)→ 投資の始め方
  3. ほったらかし投資術』(山崎元・水瀬ケンイチ)→ オルカン戦略

理論を深める3冊

  1. ウォール街のランダム・ウォーカー』(マルキール
  2. 敗者のゲーム』(エリス)
  3. インデックス投資は勝者のゲーム』(ボーグル)

プレゼントにも

  • 働きすぎている友人へ →『がんになってわかったお金と人生の本質』
  • 新社会人へ →『難しいことはわかりませんが...』
  • 結婚祝い →『ほったらかし投資術』

執筆後記

2016年から山崎元さんの著作を読み、インデックス投資を実践してきました。しかし2022年、「もっと効率的に」と欲張り、複雑化の罠に陥りました。

2023年、立ち止まって考えました: - 投資の目的 ≠ お金を増やすこと → 人生を豊かにすること - お金を稼ぐこと ≠ 幸せ → 自由と健康こそ幸せの源泉 - 複雑な戦略 ≠ 賢さ → シンプルさこそ真の賢さ

2024年:原点回帰。年収802万円、オルカン一本、人生最高の幸せ。
2025年結婚。2026年、父親に。


山崎元さん、あなたの教えが、私を原点に戻してくれました。


付録:私の投資の変遷

時期 投資戦略 状態
2016〜2018年 インデックスメイン シンプル、順調
2019〜2022年 インデックス+個別株 複雑化、週5〜10時間を投資に消費
2023年 立ち止まる 山崎さんの教えを再確認
2024年〜 オルカン一本 原点回帰、月1時間未満

現在の投資方針: - 投資商品:eMAXIS Slim 全世界株式(オルカン)一本 - 夫婦で年間318万円を積立(すべて非課税枠内) - 使用証券会社:SBI証券楽天証券 - 投資時間:月1時間未満

この戦略で得たもの: - 年間250時間の自由時間 - 心の平穏 - 家族との時間 - 健康の回復

山崎さん、マルキール博士、エリス氏の教え通り、「シンプルに、淡々と、長期で」。これが私の答えです。

(了)