私たち夫婦の不妊治療、その記録
これは、私たち夫婦の不妊治療の記録です。
つい先日、私たちの治療は「体外受精」という新たな段階へ進むことが決まりました。この大きな節目に、これまでの経緯や自分たちの想いを、一度正直に記録しておきたいと思っています。
背景:40歳と35歳、結婚と同時に始まった妊活
私たちの状況を、改めて整理しておきます。 現在、私は40歳、妻は35歳です。2025年の春に籍を入れ、夫婦となりました。
交際期間中から、将来の家族計画については折に触れて話し合ってきました。「子どもはいるといいね」「もし授かるなら、2人いると賑やかで楽しそうだね」といった、ごく自然な会話です。しかし、私たちの年齢、特に私の年齢が40代に差し掛かっているという現実は、常に頭の片隅にありました。のんびりしている時間的猶予は、おそらくあまりないだろう、と。
だからこそ、私たちは結婚という節目を、本格的な妊活開始の合図とすることに、ごく自然な流れで合意していました。「新婚生活を楽しむ」ことと「妊活を始める」ことは、私たちの中では二者択一ではなく、同じ未来に向かうための地続きの行為だったのです。将来的に「子どもは2人欲しい」という共通の夢を叶えるために、計画的に、できることから進めていこう。そう考え、私たちは入籍前から妊活をスタートさせていました。
現状把握:夫側の検査結果
不妊の原因の約半分は男性側にもある、という事実は、妊活を意識し始めてすぐに知りました。だとすれば、最初にやるべきことは明白です。まず夫である私が徹底的に検査を受け、自分たちの現在地を正確に把握する。それがパートナーに対する誠意であり、全てのスタートだと考えました。
クリニック選びは、主にインターネットでの情報収集から始めました。重視したのは、男性不妊の検査・治療に実績があること、そして通いやすい立地であることです。いくつかの候補の中から、評判やウェブサイトの情報が充実していた都内のクリニックに決め、入籍を前に、予約の電話を入れました。
【精液検査】「自然妊娠可能」という結果
まず受けたのは、精液検査でした。予約した日時にクリニックへ向かい、受付を済ませると、プライバシーに配慮された個室に案内されました。プロセス自体は淡々としたものですが、自分の「妊活当事者」としての第一歩だと思うと、言いようのない緊張感があったのを覚えています。
後日、妻と共に結果を聞きに行きました。診察室で提示された検査結果に、私たちは安堵のため息をつきました。
精液の量、精子の濃度、総精子数、運動率といった主要な項目が、すべてWHO(世界保健機関)が定める基準値を大幅に上回る、非常に良好なものだったのです。
| 検査項目 | 私の結果 | WHO基準値 (2021) |
|---|---|---|
| 精液量 [ml] | 3.8 | 1.4 以上 |
| 精子濃度 [百万/ml] | 60.43 | 16.0 以上 |
| 総精子数 [百万] | 229.65 | 39.0 以上 |
| 精子運動率 [%] | 72.95 | 42.0 以上 |
表1:精液検査結果とWHO基準値の比較
そして、医師からの診断レポートには、「自然妊娠が可能な精液所見です」という、最も心強い一文が記されていました。この「お墨付き」に、私たちは心の底から安堵しました。少なくとも、私自身に、妊娠を妨げるような大きな問題はない。そう確信できたことは、その後の妊活を進める上で、非常に大きな精神的な支えとなりました。
【精子正常形態率】基準値以下の「1%」という数値
しかし、手放しでは喜べませんでした。詳細なレポートの中に、一つだけ、基準値を大きく下回る項目があったからです。それは、精子の「形」の正常さを示す、正常形態率です。
WHOの基準値が「4%以上」であるのに対し、私の結果は「1%」でした。レポートに掲載されている正常な精子のイラストと、奇形精子の様々なパターンのイラストを見比べながら、自分の精子の99%が後者に分類されるという事実に、先ほどの安堵感は一気に吹き飛び、血の気が引くのを感じました。
しかし、その後の診察で、専門医は私たちの不安を察したように、落ち着いた口調でこう説明してくれました。 「WHOの基準は非常に厳しく、ほとんどの男性が基準値を下回ります。大切なのは全体のバランスです。あなたの場合は、精子の数が十分に多く、運動率も非常に高い。ですから、正常な形態の精子の『絶対数』は十分に確保できています。この正常形態率1%という数値は、全く心配する必要はありません。問題ないレベルです」
この言葉に、心から救われました。数値の一つ一つに動揺するのではなく、全体像を見て判断することの重要性を痛感した瞬間でした。
【血液検査】見えてきた課題
精液検査と同時に、血液検査も受けていました。こちらは、精子を作るための体内のコンディション、ホルモンバランスなどを確認するためのものです。男性ホルモンであるテストステロンをはじめ、各種ホルモン値には異常はありませんでした。しかし、栄養状態を示す項目で、2つの課題が見つかりました。
- Zn (亜鉛): 83 μg/dL (基準値 80 - 130)。基準値内ではあるものの、下限値に近い。
- 血清鉄 (Fe): 47 μg/dL (基準値 60 - 210)。明確に基準値を下回っていました。
医師からは「病的なレベルではなく、日常生活に支障はないでしょう。しかし、精子の形成には亜鉛や鉄といったミネラルも重要です。より良いコンディションを目指すなら、意識して摂取するといいかもしれません」というアドバイスがありました。
これは「問題解決」のためではなく、「より良いコンディションを維持し、向上させるための未来への投資」として、私たちは前向きに体質改善に取り組むことにしたのです。
検査結果を受けてのアクション
検査結果は、自分の行動を方向づける羅針盤になりました。良好なコンディションを維持・向上させるため、日々の生活で実践していることの記録です。
【食事改善】タンパク質と「鉄」
精子の主成分であるタンパク質に加え、血液検査で基準値以下だった「鉄分」を補うことを強く意識しました。
- 鉄分豊富な食材: 赤身の肉、レバー、ほうれん草、小松菜、あさりなどを食事に取り入れる。妻も協力してくれ、レバーとニラの炒め物や、ほうれん草のおひたしなどが食卓に並ぶ頻度が増えました。
- タンパク質: 納豆(1パック)と卵(1〜2個)は、ほぼ毎日欠かさず食べるようにしています。
コラム:鉄分補給のライフハック
食事改善、特に「レバーを食べる」というのは、調理の手間などを考えると毎日続けるのは難しいです。仕事で疲れて帰ってきた日などは、なおさらです。そんな中で、個人的に最強だと思っているのが、セブン-イレブンの「7プレミアム 純正ごま油で食べる燻製豚レバー」です。調理不要で手軽に鉄分を補給できます。血液検査で鉄分不足を指摘された自分にとって、これはまさに救世主でした。サラダのトッピングにしたり、そのままおつまみにしたりと、無理なく続けられるのが最大の利点です。
【サプリメント】亜鉛
亜鉛の数値が基準値の下限ギリギリだったため、「明確な目的意識を持って」サプリを摂取することにしました。数ある製品の中から「ネイチャーメイド 亜鉛」を選んだのは、品質管理への信頼性が高く、価格も手頃で、何より近所のドラッグストアでいつでも手に入るという継続しやすさを重視した結果です。毎日の夕食後、忘れないように飲むことを習慣にしています。
【生活習慣】サウナ
大のサウナ好きで、以前は週に2〜3回は通っていました。しかし、精子は熱に弱いという性質があるため、妊活を始めてからは、その頻度を月に2回ほどに減らしています。検査結果が良かったからといって油断するのではなく、考えられるリスクは少しでも減らしておきたい。その思いからの、ささやかな我慢です。サウナ仲間からの誘いを断るのは少し心苦しいですが、今は仕方がありません。
【口腔ケア】と【予防接種】
体全体の健康状態を維持するため、3ヶ月に一度の定期的な歯科検診を継続しています。 また、将来の家族を守るため、HPVワクチンの追加接種も検討中です。HPVが精子に感染すると、その運動率を低下させるなど、悪い影響を与える可能性も指摘されているため、重要な予防策だと考えています。
夫婦の協力体制:「原因不明」の壁と、体外受精へ
夫である私の検査結果は、総じて「自然妊娠を目指せるレベル」でした。これは喜ばしいことであると同時に、新たな壁に突き当たったことを意味しました。「では、なぜ私たちは妊娠しないのだろう?」──。明確な原因が見つからないまま、時間だけが過ぎていく焦り。それが、私たちを次のステップへと向かわせる大きな力となりました。
時系列の整理
| 時期 | 当事者 | 出来事 |
|---|---|---|
| 入籍前 | 夫 | 不妊治療クリニックでの検査 |
| 2025年 春 | 夫婦 | 入籍、本格的な不妊治療開始 |
| 2025年 夏 | 夫婦 | ステップアップを本格検討 |
| 2025年 秋 | 夫婦 | 体外受精への挑戦を正式決定 |
表2:妊活の歩み
そして、決断の朝が来た
つい先日の朝、妻から連絡がありました。また生理が来てしまったこと。そして、だからこそ、以前から話し合っていた通り、今周期から体外受精に挑戦したいという、強い意志の表明でした。
毎月訪れる、生理が来たことへの小さな失望。しかし、そのメッセージには、悲しみだけでなく、次へ進むという力強い決意が滲んでいました。その決意を受け取り、私は「わかった。一緒に頑張ろう」と返信しました。私たちの、体外受精への挑戦が始まった瞬間でした。
しかし、感傷に浸る間もありませんでした。妻とのやりとりは、すぐに現実的な課題へと移ります。治療を進めるには、採卵の前に夫である私の同席かオンラインでの説明参加が必須であること。そして早速、夫婦のスケジュール調整が必要になるという、具体的なミッションが共有されました。
これが、体外受精というチーム戦における、夫に課せられた最初のミッションです。私たちは早速、夫婦というチームの連携を試されています。
現時点での疑問と整理
Q1. 体外受精における夫の役割は?
A1. 精子提出はもちろん、治療開始前の重要な説明に同席し、同意書にサインするという法的な責任があります。また、妻の心身の負担を理解し、生活をサポートすること、高額な治療費を分担することなど、あらゆる面で「チーム」として機能する必要があります。
Q2. 精子の正常形態率の低さは?
A2. 私の結果は1%でしたが、専門医からは「問題ない」と言われました。重要なのは、他の数値(数や運動率)との兼ね合いです。一つの数値に動揺せず、総合的な診断を聞くことが重要です。
Q3. なぜ体外受精へ進むのか?
A3. 「年齢」「タイミング法を続けた期間」「夫の検査結果は良好だが妊娠に至らないこと」「妻のAMHが低いこと」。そして最終的には、「これ以上、時間を無駄にしたくない」という夫婦の強い意志が決め手となりました。
最後に
ここまでが、私たちの今の、ありのままの姿です。 この道のりを振り返ると、本当に一つではないことを痛感します。
- 現状把握:まず自分の身体を知ること。
- 結果の解釈:数値に一喜一憂せず、専門医の見解を聞く。
- 新たな壁:「原因不明」という壁。
- 対話と決断:治療の重みを受け止め、二人で悩み、覚悟を固める。
- 挑戦の開始:決断の朝を迎え、具体的な課題に夫婦で挑む。←(今、ココ)
これから始まる体外受精の道のりも、また、この場所に記録していければと思っています。
追伸:参考になった漫画
最後に、専門知識とは違う角度から、私たちの妊活を精神的に支え、夫婦の対話を深めるきっかけになった漫画を記録しておきます。駒井千紘さんの『妊活夫婦』(全5巻)です。
不妊治療のプロセスがリアルなのはもちろん、それ以上に、夫婦それぞれの心の動きが丁寧に描写されている。その全てが「うちと一緒だ」と共感の連続でした。特に、夫がなかなか当事者意識を持てずに妻とすれ違ってしまうエピソードには、我が身を振り返るようで、胸に迫るものがありました。この漫画がなければ、私たちの対話はもっと浅いものになっていたかもしれません。
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